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協調的な学びの文化はマネージャがカギ

2021年4月8日に開催されたLEARNING & DEVELOPMENT SUMMIT ASIAというオンラインイベントに参加しました。その中から、Degreed社クライアントエンゲージメントパートナーのJon Rivasさんのセッションをご紹介します。


タイトルは、「The Manager’s Guide to a Collaborative Learning Culture」。ここでは、「協調的な学びの文化は、マネージャがカギ」と訳させてもらいました。このセッションを通じて、マネージャの役割の重要性をJonさんは話していました。


2つのポイント

セッションの内容に入る前段で、2つの大きなポイントが紹介されました。それは、「心理的安全」と「グロースマインドセット」です。


心理的安全と言えば、エイミー・C・エドモンソンさんです。彼女の言葉の中でも、「リーダーは、自分の知っていることを共有し、知らないことを認めなければならない。このことが、より多くの心理的安全を生みだす」という部分に触れています。


グロースマインドセットと言えば、キャロル・ドゥエックさんです。彼女の言葉からは、「誰もが成長できるということがわかれば、成長を生み出すことができる環境、“まだ”にあふれている環境にいることは、基本的な人間の権利となる」という部分に触れています。

※グロースマインドセットについては、以前、弊社ブログで触れています。 勝利のためのスキル:成長のマインドセット


グロースマインドセットを伴った心理的安全な環境が、文化を変えていくための重要なポイントであり、学びの文化を創り出していきます。この2つの考え方をベースにすることが、協調的な学びの文化を創り出すためのマネージャの役割について考えていくにあたり、重要なポイントになるということだそうです。


現場での学び

Degreed社が行った調査「How Workforce Learn 2019」によると、43%の人が、学習するための時間がないと回答しています。



時間の他にも、指導や方向性の提示の欠如、エンゲージメントの欠如などがあがっています。これらは今も同じ状況ではないでしょうかとJonさんは問いかけていましたが、その通りだと思います。さらに、時間は増やすことができないので、効率的になる必要があるとも言っていました。


さらに、世界経済フォーラムでは、54%の人が、今後5年間で職場が変化し、スキルを学びなおす必要があると考えているという結果があり、PWCのレポートでは、ビジネスリーダーの80%は人材開発分野の革新が必要と考えているという結果を紹介していました。これらの結果から、従業員の成長と発展を人材開発部門だけで担当するという時代は過ぎ去ったことを表しているのではないでしょうかという問いかけがありました。


学びはどこで行われているか

さらに、職場の学習について、掘り下げていました。同じレポートからの結果です。従来から行われている研修は、従業員が成長していくために行われているので重要ですが、これらは、業務とは別の環境で行われていて、参加するためには、業務から離れなくてはなりません。また、開催頻度も少ないという状況です。



一方、業務中に発生している学習があります。学習の大半がここで行われています。毎日のように調べたり、誰かに支援してもらったりすることを通じて学んでいるという結果が出てきました。


このような行動は、学習として認識されていないかもしれませんが、実際に発生しています。私たちが協調的な学びの文化に向かっていくためには、このような今までとは違う学習を受け入れていくことが重要であると強調していました。


さらに、これらのデータが示しているのは、従業員はすでに有機的に学ぶ時間を見つけているということでした。実際、発生している学習の80%以上は、45分以内という短時間で行われていたのです。


ではそのような学習はどのように行われているのでしょうか。

業務中にわからないことが出てきたとき、どうしているのか。ほとんどの場合、Webにアクセスして検索をしたり、よく利用するお気に入りのサイトを利用したりすることが多いと調査結果にも出ています。


残念ながら、業務中の学びにおいて、会社が用意している、学習用リソースから学ぶことはめったにないということもわかりました。ここに学習における課題が存在します。


また、先の調査の回答の2番目以降は、ガイダンスや方向性の欠如に関連していました。この課題に対して関与できるのがマネージャであると語っていました。マネージャが従業員の学習における障害を取り除くことをサポートできるのです。


サポート戦略と3つのE


マネージャがメンバーをサポートしていくための戦略を立てる上で、3つのEをポイントとしてあげていました。それは、「Excite」「Engage」「Embed」です。


「Excite」

まず、明確な「Why」メッセージをつくります。これは、組織のミッションとビジョンに紐づいたものです。どのような価値を実現するのかを伝えることで、態度や行動に影響を及ぼします。そしてどのように行動してもらうのかを示します。どうすればみんなWhyメッセージを実現できるのかを明らかにします。


Whyメッセージの次は、選択肢を提供し自由に学ぶ環境が重要です。学校のようなスタイルではなく、学びたい時間と場所を自由に選べることが大事です。どのように実現するかのアイデアは無制限です。

このように最初のステップ「Excite」で自律性や目的を創り出していきます。


「Engage」

学習について、好奇心をもって会話の機会を持ちましょう。内容について、話し合い、積極的に学習者の声に耳を傾けましょう。何を学んでいるかを尋ね、自分が身につけようとしているスキルについて、どうやっているか、なぜ身につけようとしているかについて共有することが大事です。


多くの人はネットで検索したり、同僚に聞いたりしています。では、チームメンバーがどんなテーマに関心があるか知っているマネージャはどのくらいいるでしょうか。


もう一つの方法は、ソーシャルラーニングです。組織と個人の目標を達成するために、共有やリコメンド、教えあうことを推奨することです。

組織内のインフルエンサーを知っていますか?学びの文化を築くために協力してもらえますか?これは、人々がつながるためのポイントにあると思います。


今の私たちのスキルは絶滅の危機に瀕しています。将来の仕事のために、マネージャがお互いに学び合う環境に導いていかなくてはなりません。そのためにソーシャルラーニングをお薦めします。


「Embed」

従業員の経験の中に学習が浸透するように埋め込みます。学習は実際に必要に迫られたときに最も行われます。その際スピード、シンプルさ、アクセスしやすさが重要です。これは、関連するツールやテクノロジー、リソースの多様なポートフォリオを提供し、同僚やメンターとつなぐことを意味します。


目標は、日々の習慣や行動に浸透する方法で学習を埋め込むことです。そしてこの学習活動がデータとして記録していくと、強みや弱み、成長できるスキルのギャップを特定することができます。


より学習を身近にしていくために、ツールを紹介するイベントを開催し、ソリューションがどのように業務に価値をもたらすかを伝えることも有効です。インフルエンサーによる学びについて紹介イベントもあります。


この3つのEのプロセスを繰り返すことで、だんだん学習が組織の一部になっていきます。マネージャは組織内で大きな影響を与えることができる唯一無二の立場にあるのです。マネージャが心理的安全な環境を作り出し、成長への取り組みを作り、学ぶことの習慣化を実現できるのです。


最後にJonさんは、「学びの文化は組織の投資に対して大きなリターンを提供する可能性を秘めています。そして私たちはこれから、まだまだ成長できるのです。」とまとめていました。


セッション内容は以上です。


人材育成についてもデジタル化が進む中、学び方に対しても今までとは違う取り組みが求められてきています。より自律的にアップスキリング、リスキリングできるように、学びの文化に取り組んでいく重要性がこのセッションで紹介されていました。


Degreedのソリューションを通じて、従業員のスキルの見える化を始め、従業員一人一人にパーソナライズされた学習環境、成長機会への挑戦など、学ぶ文化の醸成を実現するお手伝いをしています。ご関心のある方はぜひお声がけください。




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