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AI時代、人材開発部門が担う役割とは― Focus London 2026で見えてきた「学習オーケストレーション」の時代

はじめに

今年のFocus Londonで印象的だったのは、「AIをどう使うか」という議論がほとんどなかったことです。


代わりに繰り返し語られていたのは、「AIを前提に、人材開発部門の役割をどう再設計するか」というテーマでした。


AIは、学習を効率化するための新しいツールではありません。仕事そのものの進め方を変えつつあります。その変化の中で、人材開発部門には何が求められるのでしょうか。


このブログでは、Focus London 2026で語られた内容を踏まえながら、AI時代のL&Dの役割について考えてみたいと思います。


※Focusは、Degreed社が開催するイベントです。先進的なリーダーたちが集まり、これからの働き方や学びについて探求します。


AIは学習を変えるのではなく、「仕事」を変える

従来、企業の学習は「研修を受ける」「eラーニングを修了する」というように、仕事とは切り離された活動として設計されてきました。


しかし生成AIの普及によって、この前提が変わり始めています。


仕事で分からないことがあればAIに相談し、その場で試し、結果を見ながら改善する。そして必要になったタイミングで理論や原則を学び直す。このように、「学習→実践」ではなく、「実践→学習→改善」という循環が日常になりつつあります。


つまり、学習そのものが仕事の中へ溶け込み始めているのです。


だからこそ、人材開発部門の役割も、「研修を提供すること」から、「仕事の中で成長が起きる仕組みを設計すること」へと変わっていきます。


L&Dの変化
L&Dの変化

人材開発部門は「オーケストレーター」になる

Focus Londonで繰り返し語られていたキーワードの一つが、「オーケストレーション」でした。


オーケストレーションとは、AIがすべてを教えることでも、人材開発部門がすべての研修を設計することでもありません。


AI、学習コンテンツ、スキル情報、業務経験、キャリア機会、管理職との対話。それぞれを切り離して運用するのではなく、一人ひとりの状況に応じて最適な形でつなぎ合わせることです。


例えば営業担当者であれば、商談前にはAIがロールプレイを提案し、商談後には結果をもとに振り返りを促します。不足しているスキルに応じて学習コンテンツを提示し、管理職には次の育成のヒントを届ける。この一連の流れを設計することこそが、学習オーケストレーションです。


これからの人材開発部門は、研修の提供者ではなく、人・AI・仕事をつなぐ設計者としての役割を担うようになるでしょう。


学習オーケストレーション
学習オーケストレーション

AI時代は「コンテンツ」ではなく「コンテキスト」が価値になる

生成AIによって、知識そのものへのアクセスは劇的に容易になりました。

だからこそ、企業が価値を生み出すのは、コンテンツの量ではありません。

重要なのは、「誰に」「どの仕事で」「どのタイミングで」「何を届けるべきか」という文脈、つまりコンテキストです。これはコースに限った話ではありません。


Focusでも印象的だったのは、「Skills Context」という考え方でした。

スキルは単なる一覧表ではありません。そのスキルがどの業務で必要なのか、どの経験によって伸び、どのキャリアにつながるのかという文脈を持つことで、AIは初めて適切な学習や経験、キャリア機会を提案できるようになります。


AI時代に重要なのは、スキルを管理することではなく、スキルに意味を持たせることなのです。


スキルコンテキスト
スキルコンテキスト

管理職こそ能力開発の中心になる

もう一つ、Focus Londonで強く感じたのは、能力開発の主役が管理職へ移りつつあることです。


社員が最も成長するのは、研修の場ではありません。新しい仕事を任され、挑戦し、フィードバックを受け、振り返る日常の中です。


その機会を最も多く設計しているのが管理職です。


AIは知識へのアクセスを支援できますが、「誰に挑戦の機会を与えるか」「どのタイミングで対話するか」といった判断は、これからも人が担います。


人材開発部門は社員だけでなく、管理職が育成しやすい環境を整えることが、これまで以上に重要になります。


測るべきものも変わる

人材開発部門の成果も、受講率や学習時間だけでは測れなくなります。

本当に問われるのは、「学習したか」ではなく、「行動が変わったか」「成果につながったか」です。


スキルが伸びたのか。管理職との対話が増えたのか。社内異動や挑戦機会につながったのか。そして最終的に、組織の成果へ結び付いたのか。

これからのL&Dは、学習活動ではなく、組織能力への貢献を示すことが求められるでしょう。


KPIの進化
KPIの進化

おわりに

Focus London 2026で私が最も強く感じたのは、AIが学習を便利にするという話ではありませんでした。AIを前提に、人材開発部門そのものをどう再設計するか。それが、このイベントを貫くテーマだったように思います。


AIによって知識へのアクセスは容易になります。しかし、人の成長が自動化されるわけではありません。だからこそ、人材開発部門の役割はむしろ重要になります。


これからのL&Dに求められるのは、研修を企画・提供することではなく、人・AI・管理職・仕事・スキルをつなぎ、一人ひとりの成長が日常業務の中で自然に起こる環境を設計することです。


AI時代に変わるのは学習手法ではありません。人材開発部門そのものの役割です。



Focus Londonのオンデマンドセッションはこちらから参照できます。


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