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Learning Technologies 2024 訪問記

Learning Technologies 2024

2月のATD Techknowledgeに続き、Learning Technologies 2024に参加してきました。今年はこのイベントに合わせて、Articulate社のグローバルパートナー会議が開催されたこともあり、良い機会だったので参加してきました。イベントの紹介も併せて、内容を共有したいと思います。


Learning Technologies Conference & Exhibitionは、今年で25周年を迎えた、ヨーロッパで最大級のラーニングイベントです。特にラーニングテクノロジーの分野では世界でも最大級のイベントです。


2024年4月17日、18日の2日間、イギリス、ロンドンのExcel Londonで開催されました。有償で参加できるカンファレンスと、無償で参加できる展示会と展示会内で開催されるセッションで構成されています。今年は11,000人を超える参加者だったそうです。


今回は、無償で参加できる展示会に参加してきました。出展者は200社以上あり、展示会内には10カ所以上セッション会場が設置されていて、合計200以上の無料セミナーが開催されていました。とても無料で参加できるとは思えないほどの情報量です。


出展社、セミナー内容共に、その名の通り、ラーニングテクノロジー分野に特化していました。もちろん、切り口がテクノロジーなだけで、企業における人材開発のこれからについての目指す未来や解決策が根底にあります。DX人材の育成や、研修というメッセージがほとんどなかったことは、日本との大きな違いだと感じました。AIを活用するスキルが中心だったと感じています。


それでは、まずは出展社を見てきた内容を共有します。

出展内容として、体感ですが、LMS/LXPベンダーが30-40%を占めていたのではないかと感じます。次いで、オーサリングソフトウェアベンダーや、コンテンツプロバイダーが多かったです。その他、トレーニングマネジメントシステムやコンサルティングサービスその他個別ソリューションがありました。


最初に、弊社のパートナーである、Degreed社とArticulate社のブースをご紹介させていただきます。


Degreed社ブース

Degreed

Degreedは、LXPというビジネスドメインを作ったといっても過言ではない、LXPベンダーです。ヨーロッパでもユーザーが増えてきたこともあり大きめのブースで出展しています。


目玉としては、生成AI機能の搭載です。パスウェイという、コースや動画、本などを音楽のプレイリストのようにまとめる機能があるのですが、その作成をAIがサポートしてくれるようになります。より効率的にパスウェイを作成することができます。


Articulate社ブース

Articulate

Articulateは、グローバルでトップレベルのオーサリングツールのベンダーです。今回は、夏以降にプレリリースが予定されている、AIアシスタントとAI動画機能を紹介していました。AIアシスタントはRiseで制作する際、WordやPDFなどのドキュメントからコースを作ってくれるものになります。画像も生成することができます。もともと簡単にコンテンツを制作できたRiseがさらに便利になります。また、AI動画機能により、コンテンツの幅が広がります。


その他、今まで別サービスだったReachというLMSのスターターキットが無償でつきました。これにより数10人規模のeラーニングであれば、Articulate360で完結するようになりました。


なお、パートナーミーティングでは、さらに先のプランも発表されていました。こちらについては、発表できるようになりましたら、順次ご案内していきますのでご期待ください。


では、全体の所感に入ります。

LMS/LXPベンダーを眺めていくと、全体的にユーザーインターフェースは同じようなデザインになっている印象を受けました上部もしくは左部にメニューがあり、学習コースが、カード型(タイル)で表示されている感じです。メッセージとしては、スキルファースト、パーソナライズ(AIリコメンド、アダプティブ)、生涯学習者の支援といったものが多かったです。


製品としてはSMB(中小規模の企業)向けとエンタープライズ向けに分かれてきた感があります。SMB向けの場合は、独自のオーサリングツールが含まれているケースが多かったです。素早く簡単に自社のコンテンツが作れるようになることに加え、現場側でも制作できることを押していました。UGC(Use Generated Content)の流れもあると感じました。

エンタープライズ向けは、スキルファースト戦略、コンテンツプロバイダーとのエコシステム構築、スキルやコンテンツのAIによるリコメンドといったとことがトレンドでした。


次にオーサリングツールについてですが、生成AIを活用したソリューションが目立ちました。VR/AR関連は少なかったです。生成AIの中でも、特にAI動画作成ツールは目立っていました。10社近く出展していました。1年前に目立ってきたベンダーに、すでに老舗感を感じてしまうほど、テクノロジーの進み具合に驚きを隠せませんでした。


生成AIは他にも、シナリオ作成や画像作成、テスト作成に適用されてきていました。

その他翻訳もサービスも出始めています。今後、eラーニングコンテンツ制作のあり方が大きく変わってくる予兆を感じました。


一見似ているソリューションが非常に多くなってきていると感じました。しかし、細かい点ではそれぞれ違う点が多々あります。これからテクノロジーの選択をしていくには選ぶ側の目利きが重要になってきていることも痛感しました。単に技術としてではなく、何を実現するのかが明確になっていないと、ソリューションの海に埋もれてしまいそうです。


では、セッションについてご紹介します。


無料セッションについてですが、各セッションは30分で構成され、15分の間を、休憩をはさみ、次のセッションが始まるといった形でした。1日7-8セッションがありました。会場は展示会内にオープン形式で設置されていました。それが11カ所。パイプ椅子でしたが、50人以上座れる広さでした。ヘッドセットも用意されていましたが、ほとんどのセッションでは不要で、普通に聞き取りやすかったです。それでいて、周囲のブースや他のセッション会場の邪魔にならないようになっていたので、プレゼンの環境が素晴らしかったです。


内容についてですが、ビジョンを示すもの、事例を紹介するもの、製品デモなど多岐にわたっていました。ベンダーがスピーカーなのですが、トレンドの内容が聞けて興味深かったです。事前にセッション内容をチェックして予定を組み、今回は、スキル関連、生成AIといった内容のセッションへの参加が多くなりました。


スキル関連のセッションは、LMS/LXPベンダーがスピーカーとなっていました。だいたいどのベンダーも主張しているポイントは似ていて、まとめると次の3つに集約できると感じました。

1.ビジネスに必要なスキルを明確にする。

2.スキルを学ぶための学習環境を用意する。

3.学んだスキルを活用する機会を作る。


1のビジネスに必要なスキルでは、従業員のキャリアニーズよりも、ビジネスニーズやパフォーマンスニーズから必要なスキルを明らかにしています。マネージャーの役割に触れているセッションもありました。


2の学習環境では、研修だけでなく、ノウハウや最新情報といったものも環境の一つとして考えるということが当たり前になっていました。また、パーソナライズや従業員が学習しやすい環境、職場での学習時間ということも触れられていました。


3の活用する機会ですが、次のポジションということだけではなく、新しいタスクやプロジェクト、メンターやコーチといった役割などにも積極的に関われるということでした。

テクノロジーの導入だけではなく、L&Dの存在意義が変わってきているということがメッセージとしてありました。新しい環境に合わせて、L&Dも進化をしていく時期にあるのだと思いました。


生成AI関連のセッションでは、デモを交えたものが多かったです。ブースでもデモを見ることができるのですが、埋まっていることも多く、セッションとしてじっくりと見ることができたのは良かったです。AI動画はだいぶこなれてきた感があります。音声は英語ではかなりテキストからでも聞き取りやすいものになってきています。日本語については、デモでは見ることができませんでしたが、すぐに良くなることが期待できます。


AI翻訳もやれるベンダーもあり、近いうちに多言語コンテンツの制作期間とコストがかなり圧縮されることになるのではないでしょうか。


さらに、AIが構成案も考えてくれるようになっているので、品質が保たれたコンテンツを誰もが作れるようになりそうです。


すでにChatGPTなどを使用して作業を行っている方もいるかと思いますが、これが一つのツールで完結してできるようになる日も近そうです。


以前からLearning Technologiesのイベントはチェックしていて、オンラインでの参加をしたこともあったのですが、実際に参加してみると、やはり楽しむことができました。また、ヨーロッパの企業も、ラーニングテクノロジーへの関心が非常に高くデジタルラーニングも進んでいるように感じられました。出展者もヨーロッパの各国から参加していて、アメリカのイベントとも違う顔ぶれを見ることができました。


ラーニングテクノロジーに携わっている方は、参加してみると多くの視点を得られると思いますので、来年の参加を検討してみてはいかがでしょうか。


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