COVIS19以降、デジタル化の流れ、働き方改革、生成型AIの出現など、ビジネスの変化が激しくなり、従来の考え方や手法では追いつかなくなってきています。今私たちが直面している世界は、今までの世界とは異なるものであり、ビジネスと従業委双方のニーズを満たすためには、今までとは異なるアプローチが必要なのではないでしょうか。
先進的な企業はスキルに着目したスキルベース組織にシフトし始めています。スキルベース組織とはどういうものなのか紹介していきます。なぜスキルが重要なのか。そして企業や人材開発部門はどのように考えていくとよいのでしょうか。
スキルベース組織とは
スキルベース組織(Skill-Based Organization)とは、スキルデータを活用して人材とマネジメントを情報化し、スキルの洞察を活用して現在および将来の従業員の能力、開発、配置に関する意思決定を行う組織のことを指します。
企業としては、ジョブの分類だけではなく、プロジェクトやタスクまで必要なスキルを設定します。一方、従業員についても、一人一人のスキルを落とし込んでいきます。そしてスキルを軸に配置や能力開発を進めて行きます。
なぜスキルベース組織が着目されているのか
スキルベース組織が着目されているのは、ビジネスの変化が激しくなり、コンピテンシーモデルやフォーマルなジョブディスクリプションを作るという従来の考え方では追いつかなくなったからといわれています。次々と新しいスキルが必要になってくる世界では、固定的なスキルセットの中での人材配置や能力開発に制約されてしまうと、次のビジネスとのスキルギャップがますます大きくなってしまいます。
海外の企業においては、産業時代以来、「ジョブ」は仕事のあらゆる側面を組織化し、管理するための決定的な構造でした。ジョブが組織構造や肩書き、報酬、仕事の内容などを決定してきました。ビジネスや市場の変化が緩やかで、従業員が産業機械の歯車のように例えられていた時代には、このアプローチは理にかなっていました。しかし、今日私たちが働いている世界は異なるものであり、ビジネスと従業員双方のニーズを満たすためには、異なるアプローチが必要であるという認識が広がってきています。
Deloitte社の調査レポートDeloitte 2023 Global Human Capital Trends Surveyでは、ほぼすべてのリーダーが、ジョブを軸とした体制の撤廃が組織の成功にとって重要であると回答しています。
人材開発部門として、どのようにスキルベース組織に向かい合うか。
スキルベース組織においては、「スキル」が企業と従業員との間の共通言語となります。企業は将来のビジネスに必要なスキルや現在のビジネスと人材とのスキルギャップの把握、そしてそのギャップを埋める施策が必要です。一方、従業員側も自分の保有しているスキルや将来のキャリアに必要なスキルの把握はもちろん、その開発も必要になります。
固定的な枠の中だけでスキルを管理する方法では不十分であり、もっと広い範囲で取り組んで行く必要があります。特に新しいスキルを見出す、スキルを開発するという点では、人材開発部の重要性が高まります。それでは人材開発部門としてはどのように取り組んでいくことができるでしょうか。それには3つのポイントがあります。
スキルとラーニングを結びつける
スキルデータを集める
ラーニング変革への挑戦
一つ目のポイントは、スキルとラーニングを結びつけることです。まずは、現在提供している研修やeラーニングコースに対して、関連するスキルを設定します。スキルは、人事システムやタレントマネジメントシステムなどで定義されているスキルの中から選んでいくとやりやすいです。
スキルと研修が1対1である必要はありません。そして、すべてのスキルに対して研修を関連付けられなくても良しとします。最初から完全形を作るのではなく、できるとことから着手します。
二つ目のポイントは、スキルデータを集めることです。
従来のようにアンケートや人事評価などを通じて従業員のスキル状況を把握することも一つの手段ではありますが、学習活動もスキルデータの一つとなります。受講履歴や学習活動から、従業員が今学んでいるスキルのデータを集めることができます。
スキルデータが集まるにつれ、より深い分析ができるようになります。
従業員プロファイルやスキルに基づく業
務や組織の設計にも活用してくことができます。一部で始まりつつあるスキルをベースとした採用と連動することも考えられます。
三つ目のポイントはラーニング変革への挑戦です。
スキルデータが集まり、スキル状況を把握できるようになると次はスキルの構築がポイントになります。スキルを構築していくには、従来の一斉研修のモデルでは追いつかなくなってきます。常にスキルをアップデートする環境が必要になり、よりパーソナライズされた環境が求められます。
集合研修やeラーニングコースが完了したら終わりではなく、そのスキルに関連する学習リソースを結びつけ、継続的にスキルを磨く習慣をつける環境が必要になります。
学習=研修ではなく、様々なリソースから継続して学び続けるように、学習の在り方を変革していくこともポイントになります。さらに、学習したスキルを実践する環境との連動も必要になってきます。
スキルの習得には研修の提供だけではとどまりません。スキルを把握し、学び、活かすというサイクルが重要になります。今後は人材開発部門の役割も変わることも考えられます。スキルベース組織を目指す上でラーニングの変革への挑戦は切り離せません。
スキルベース組織への流れは始まっている!?
2023年3月に開催されたDegreedの年次フラッグシップカンファレンスであるLENSでは、スキルベース組織に取り組み始めている企業の事例が多く発表されました。
デロイト社のMichael Griffiths氏によるスキルベース組織のセッションを始め、ノボノルディスク社、キャプジェミニ社などのスキルを中心とした育成への取り組みが発表されていました。多くの企業がスキルにシフトしていて、社内のスキルデータを収集し、活用し始めています。
また、Degreed社CEDのDevid Blake氏は、後日、別のメディアで次のように語っていました。
これは大企業とそのマーケティング部門がソーシャルメディアに移行するのとよく似ていると思います。私たちは現在、スキルベースの経済、スキルベースの組織にいると思います。私は何が起こるか、そしてそれはソーシャルメディアと同じようにかなり速く起こると思います。
ChatGPTなど生成AIは過去の経験ではないほどの速さで浸透し始めています。AIの進化により、スキルに関してもそのデータ活用の場はますます多くなります。すでにスキルをベースにした採用ということも始まっています。まずは自社のビジネスと従業員をスキルというLENSで見ていくことを始めて行ってはいかがでしょうか。
Degreedはスキルベース組織を目指している企業の成功を支援するソリューションです。次のブログもぜひご一読ください。
Degreedにご関心をもった方はお気軽にお問い合わせください。
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